リハビリテーションの概要

 リハビリテーションとは、Re(再び)Habilis(適合)tion(すること)が合体して出来上がった言葉で、もともとは社会的復権(社会的な立場を失った場合にそれを取り戻す)という意味合いで使われていた言葉ですが、現在では障害や病気で低下してしまった心身機能や社会的能力を取り戻す活動という意味合いで使われることが多いようです。

 手術をして自宅に帰るまでの過程は、急性期、回復期、維持期の3ステップに分けて考えられています。もともとは脳卒中や大腿骨頸部骨折など寝たきりの原因になるような重症のケースのために生み出された概念ですが、OSLの入院の際にも自分で意識して次のようなステップでリハビリテーションを行うのがいいと思います。

 手術直後~自力でベッドから立ち上がれるまでに行われるリハビリです。なにも、ベッドでダンベルを持ち上げるわけではありませんよ。手術後はなにかと自分の身の周りのことを自分でするのも億劫になるものですが、「自分で出来ることは自分でするように努力をする」のが、この段階では最も重要ではないかと思います。但し、医師から止められていることはやっちゃダメです。医師から許可が出ている範囲内で、できるだけ今まで通りの生活を心がける。ずっと寝続けているのではなく、少し体を起こしたりするだけでも大分次のステップに進むうえでは大切になると思います。食事を自分でするというのも、立派にリハビリテーションの一環です。

 自力でベッドから立ち上がれるようになってから、退院するまでのリハビリです。ここをしっかりやらないと、家に帰ってからの活動が大きく低下しますので、現在かなり重要視されるようになっています。

 リハビリ室で機能訓練を受けるというのが一番イメージとしては解りやすいかもしれません。が、OSLのリハビリはそこまで重大にやる必要もないようですので、おそらくリハビリ室には案内されないと思います。ベッドでずっと寝てばかりいるのではなく、出来る限り椅子に座って過ごす、病棟内を歩く、自力で入浴する なんていうのがメインになると思います。外出許可が出れば、外出もしましょう。病院内は病人にものすごく優しい作りになっていますが、一般社会はそうはいきません。おそらく、これまで意識をしてこなかったであろう、「なんでこんな小さい段差が?」とか「道ってこんなに傾いてたっけ?」などということを思い知ることになります。入院中にこれを体験しておくことは、とても大切だと思います。

 外出許可がでるころには、そろそろ退院という話がでてくるのではないか?と思います。

 退院後に自宅で行うリハビリです。病院は異空間ですので、くつろぎたくてもくつろげないことが多いかと思いますが、家に帰ってくると本当に家っていいなと思います。思う存分くつろぐことができますが、ここでダラダラとしてしまったら、体の機能はどんどん衰えてしまいます。家でゴロゴロとテレビやビデオを見ながらダラダラと過ごすのではなく、病院の中でしていたような感じで一日きまった時間を歩くとか、なるべく座って過ごすとか、そういうのが大切です。

 もちろん、外出することも大切です。もしかしたら会社員ならば「外出出来るなら仕事に復帰しないとだめなのでは?」と思うかもしれませんが、すんなりと職場に復帰するために必要なステップと捉えるようにしましょう。手術後は自分でもびっくりするくらい体力は落ちています。関節の可動範囲も大分制限されていますので、通いなれた道なのにもかかわらず、世界が違って見えるはずですので、積極的に外出をし、今の自分に出来ることが何なのか?を把握することはとても大切です。

 一度衰えてしまったものを、再び元に戻すのはとても大変です。手術をした部位以外のところをいかに衰えさせないか?が、リハビリテーションでは最も大切な考え方になりますので、覚えておいてください。

 もしかしたら、やる気が出なくて何も出来ない人が居るかもしれません。「やる気が出てから行動する」パターンもありますが、多くの場合は「行動しているうちにやる気が生まれてくる」物なのだそうです。脳科学的に説明すると、体が活動的になり始めると、「あ、今、俺ってやる気のある状態なんじゃないの?」と脳が考え始めて本当にやる気が伴ってくるんだそうです。 皆さんも、やりたくないことを無理やりやり始めたら、だんだん面白くなってきて夢中になっちゃったって経験ありますよね? ですから、やる気のないときは、何も考えなくてもできそうなことからまず始めるというのがいいと思います。

 ただ、もっと注意すべきなのは、やる気がありすぎて、やりすぎてしまい、かえって悪くならないようにすることです。刑事ドラマとかで怪我をして入院した刑事が看護師から止められてるのに起き上がって歩行訓練をしているシーンを見たことがありますが、これが一番やっちゃいけない事です。 同室に入院している人の中にも医者から言われた以上のことをやってしまい、入院が伸びてしまった方が居ました。 「俺の体のことなんだから、俺が一番分かってんだ!」というタイプの方に、このパターンが多いのではないかと思います。 医師の言うことが絶対とは限りませんが、餅は餅屋。専門家の意見はきちんと聴き、間違っていると思ったら先生とお互いに納得がいくまで話し合うようにしましょう。